老後の資産を次世代へ ~ 終身保険が役立つケースと選び方
老後の資産継承について考えてみませんか
定年退職を迎え、これからの人生設計を考える中で、「自分に何かあったとき、残された家族に負担をかけたくない」「これまでの資産を大切な人にきちんと引き継ぎたい」とお考えの方もいらっしゃるかもしれません。
相続というと難しく感じたり、まだ先のことと思われたりするかもしれませんが、元気なうちに少し考えておくことで、残されるご家族の安心につながります。
この記事では、資産を次世代へ引き継ぐ方法の一つとして、「終身保険」がどのように役立つのか、その基本的な考え方や選び方について、分かりやすく解説します。
終身保険とはどのような保険ですか?
保険には様々な種類がありますが、大きく分けて「一定期間だけ保障する保険(定期保険)」と「一生涯保障が続く保険(終身保険)」があります。
終身保険は、保険に加入してから亡くなるまで、保障が一生涯続きます。もしものことがあった際には、あらかじめ指定しておいた受取人の方に死亡保険金が支払われます。保険料の払い込み期間には、一定期間で払い終えるものや、一生涯払い続けるものなど、いくつかのタイプがあります。
また、終身保険には「解約返戻金(かいやくへんれいきん)」があるのが一般的です。これは、途中で保険を解約した場合に戻ってくるお金のことです。ただし、保険に加入してからの期間が短いと、払い込んだ保険料よりも戻ってくるお金が少なくなることがあります。
終身保険が資産継承に役立つ点
終身保険の死亡保険金は、ご自身が亡くなった後、受取人が保険会社に請求することで支払われます。この仕組みが、資産を次世代へ引き継ぐ際にいくつか役立つ点があります。
1. 確実にお金を残せる
終身保険は、保障が一生涯続くため、いつか必ず保険金が支払われます。これにより、「亡くなったときに、指定した人へ確実にお金を残したい」という希望を叶えることができます。
2. 受取人を指定できる
死亡保険金の受取人は、保険契約を結ぶ際に自分で指定することができます。これにより、「この人に、これだけのお金を残したい」という意思を明確に反映させることが可能です。法定相続人以外の方を受取人に指定できる場合もありますが、その場合は関係性など保険会社所定の条件があるため確認が必要です。
3. 受取人が比較的早く保険金を受け取れる可能性がある
ご自身が亡くなった後、銀行預金などの相続財産は、相続人の間で遺産分割協議がまとまってからでないと手続きが難しい場合があります。しかし、死亡保険金は、保険契約で定められた受取人が保険会社に請求し、必要書類を提出すれば、比較的早い時期に受け取れることがあります。これは、残されたご家族が当面の生活資金などに困らないようにするための助けとなります。
4. 資産の分割がしやすい
不動産などの資産は、相続する際に分けにくい場合があります。一方、終身保険の死亡保険金は「お金」という形で受け取れるため、あらかじめ残したい金額を保険で準備しておけば、ご家族が必要に応じて分けたり使ったりしやすくなります。
5. 生命保険金の非課税枠を活用できる可能性がある
死亡保険金は、相続税の計算において、「500万円 × 法定相続人の数」で計算される非課税枠が設けられています。この非課税枠を活用することで、相続税の負担を軽減できる可能性があります。ただし、この非課税枠の対象となるのは、亡くなった方(被保険者)が保険料を負担していた契約に限られるなど、いくつか条件がありますので注意が必要です。税金の取り扱いは個別の状況や今後の税制改正によって変わる可能性がありますので、詳細は税理士などの専門家にご確認ください。
終身保険を資産継承で使う際の注意点
終身保険は資産継承に役立ちますが、注意しておきたい点もあります。
1. 保険料の負担
終身保険は一生涯保障が続く分、同じ保険金額の定期保険と比べると、保険料が割高になる傾向があります。無理のない保険料で続けることが大切です。
2. すぐには自由に使えないお金になる
払い込んだ保険料は、原則として、保険金や解約返戻金として受け取るまで自由には使えません。途中で解約すると、払い込んだ保険料よりも少ない金額しか戻ってこないこともあります。急に資金が必要になった場合に備え、手元の資金は別に確保しておくことが重要です。
3. 医療費や介護費用としては使えない
終身保険の死亡保険金は、あくまで「亡くなったとき」に支払われるお金です。ご自身が生きている間の医療費や介護費用として使うことはできません。これらの費用への備えとしては、医療保険や介護保険などを別に検討する必要があります。
終身保険を検討する際のポイント
老後の資産継承のために終身保険を検討する場合、いくつか押さえておきたいポイントがあります。
- 目的を明確にする: 「誰に、いくら残したいのか」「何のために残したいのか(例: 葬儀費用、生活費、特定の相手への資金援助など)」を具体的に考えましょう。
- 必要な保険金額: 目的を達成するために、いくらくらいの保険金額が必要かを考えます。すでに持っている他の資産や、公的制度で受け取れる可能性のある遺族年金なども考慮に入れて、総合的に判断しましょう。
- 保険料と払い込み方法: 無理なく続けられる保険料であるか確認しましょう。保険料の払い込み期間(一生涯、一定期間など)によって、総支払保険料や月々の負担額が変わります。
- 健康状態: 保険に加入するには、健康状態の告知や医師の診査が必要となる場合があります。健康状態によっては加入が難しいこともあります。
- 他の資産継承方法との比較: 終身保険だけでなく、生前贈与、遺言書の作成、信託など、他の資産継承方法についても情報を集め、ご自身の状況に最も合った方法を検討することが大切です。
まとめ ~ 賢い保険選びのために ~
終身保険は、ご自身の亡くなった後、大切な方に確実にお金を残すための一つの有効な手段となり得ます。特に、特定の相手に確実に資金を残したい場合や、ご家族がすぐに使える資金を準備しておきたい場合に役立つ可能性があります。
ただし、保険料の負担や、生きている間は医療費や介護費用として使えない点なども理解しておくことが重要です。
保険を選ぶ際は、ご自身の現在の状況、将来への希望、他の資産状況などを総合的に考え、「何のために保険に入るのか」という目的を明確にすることが最も大切です。終身保険がご自身の目的や状況に合っているかを、他の保険や資産継承方法と比較しながら、慎重に検討してください。
保険は、人生の様々なリスクに備えるための大切なツールですが、その仕組みは時に複雑に感じられるかもしれません。分からない点や不安な点があれば、専門家や信頼できる相談相手に話を聞いてみるのも良いでしょう。この記事が、皆さまがご自身の状況に合った賢い選択をするための一助となれば幸いです。