契約中の保険を「払い済み」や「減額」する選択肢~定年後の保険見直し
定年後に保険料負担が気になったら
定年退職を迎えられ、これからの生活資金について考える中で、「毎月(毎年)の保険料の支払いが負担に感じるようになってきた」とお考えの方もいらっしゃるかもしれません。現役時代には必要だと考えて加入した保険も、ライフステージが変化すると、保障内容や保険料の負担が現状に合わなくなることがあります。
特に、お子さまが独立されたり、住宅ローンの返済が終わったりすると、必要な保障額が変わってくる場合があります。また、収入が公的年金中心になることで、毎月の支出を見直す必要が出てくることも少なくありません。
保険を見直す方法としては、解約して新しい保険に加入する、という方法もありますが、健康状態によっては新しい保険に加入することが難しい場合もあります。そのような時に検討できるのが、契約中の保険の「払い済み」や「減額」といった契約変更です。
この二つの方法について、それぞれの仕組みと、利用する際に知っておきたいことを分かりやすくご説明します。
「払い済み保険」とは?
まず、「払い済み保険」についてご説明します。「払い済み保険」とは、今契約している保険の以後の保険料の払い込みをやめて、その時点での解約返戻金をもとに、保険期間を変えずに、元の保険と同種類の保障額が少ない(一時払い)保険に変更することです。
払い済み保険のメリット
- 以後の保険料の払い込みが不要になる: 保険料の負担が完全になくなります。
- 保険期間は元の契約のまま: 例えば終身保険であれば、一生涯の保障が続きます。
- 解約返戻金の一部を元に保障が続く: 保険契約を完全に終了させるわけではないので、保障自体はなくなってしまうわけではありません。
払い済み保険のデメリット
- 元の契約より保障額が少なくなる: これまでと同じ保険料を支払わないわけですから、当然、受け取れる保険金や給付金の額は少なくなります。
- 特約が消滅する: 医療特約や災害特約など、主契約に付加していた特約は、原則として消滅してしまいます。
- 一度払い済みにすると原則元に戻せない: 後からやはり元の保障に戻したいと思っても、それは難しいと考えてください。
払い済み保険はどんな人に向いている?
「保険料の負担がどうしても厳しいけれど、最低限の保障は残しておきたい」という方や、「子どもへの資産継承目的で加入していた終身保険の保険料負担がなくなった方が助かる」といった方に向いている場合があります。
「保険の減額」とは?
次に「保険の減額」についてご説明します。「減額」とは、保険期間や保険種類はそのままに、契約している保険の保障額を減らすことです。保障額を減らすことで、その分の保険料の払い込みが不要になります。
保険の減額のメリット
- 以後の保険料負担が軽くなる: 保障額を減らした分だけ、保険料の支払いが少なくなります。
- 契約自体は継続する: 元の保険契約を続けられます。
- 一部の解約返戻金を受け取れる場合がある: 減額した部分に対応する解約返戻金が発生する場合、それを受け取ることができます。
- 主契約と一部の特約は継続できる可能性がある: 払い済みとは異なり、減額であれば主契約だけでなく、継続したい特約を残せる場合があります(特約の種類によります)。
保険の減額のデメリット
- 元の契約より保障額が少なくなる: 当然ながら、保障額を減らした分だけ、受け取れる保険金や給付金の額は少なくなります。
保険の減額はどんな人に向いている?
「保険料の負担は軽くしたいけれど、保障額はゼロにしたくない、まだある程度の保障は必要だ」という方や、「特定の特約は残しておきたい」という方に向いている場合があります。
払い済みと減額、どちらを選ぶ?判断のポイント
払い済みも減額も、保険料負担を軽減するための有効な手段ですが、どちらが良いかは、ご自身の状況によって異なります。判断する上で、いくつか考えていただきたい点があります。
- どのくらいの保障が必要か: 将来、医療や介護にどのくらいお金がかかりそうか、資産をどのくらい残したいかなど、ご自身のライフプランを考え、必要な保障額を検討しましょう。
- 保険料負担をどのくらい軽減したいか: 保険料を完全にゼロにしたいのか、それともある程度の負担は残っても良いので、保障を少しでも多く残したいのか、によって選択が変わります。
- 特約は必要か: 医療特約や介護特約など、主契約以外の特約を今後も残しておきたいかどうかで、減額が選択肢になるかどうかが変わります。
手続きの流れと確認すべきこと
払い済みや減額の手続きは、ご契約の保険会社へ連絡することから始まります。
- 保険会社へ連絡: 契約者ご本人から、保険証券に記載されている保険会社の窓口や担当者へ連絡し、「払い済み」または「減額」を検討している旨を伝えます。
- 説明を受ける: 保険会社から、手続きに必要な書類や、変更後の保障内容、解約返戻金の有無などについて説明を受けます。
- 内容を十分に確認・検討: ここが最も重要です。変更後の「保障額」「保険期間」「受け取れる可能性のある解約返戻金の額」「特約がどうなるか」「一度変更したら元に戻せるか」などを、担当者によく確認し、納得いくまで説明を受けてください。不明な点は質問し、必ず正確な情報を理解してから判断しましょう。
- 手続き: 内容に納得できたら、必要な書類を提出して手続きを行います。
特に注意が必要な点:
- 変更後の保障内容: 減額や払い済みによって、受け取れる保険金が大幅に減る可能性があります。本当にその保障額で将来の不安に対応できるのか、慎重に考えてください。
- 解約返戻金と税金: 減額によって一部の解約返戻金を受け取る場合、金額によっては税金がかかることがあります。税金についても保険会社や税務署などに確認しておくと安心です。
- 一度変更すると原則元に戻せない: 払い済みも減額も、元の契約状態に戻すことは基本的にできません。後で「やはり元の保障が必要だった」となっても、後悔することになります。
まとめ
定年後の生活において、保険料負担を見直すことは大切なことかもしれません。契約中の保険の「払い済み」や「減額」は、保険契約を続けながら保険料負担を軽減できる有効な選択肢の一つです。
しかし、どちらの方法も、元の契約より保障額が少なくなるというデメリットがあります。ご自身の健康状態、将来のライフプラン、貯蓄の状況などを総合的に考え、どの程度の保障が必要なのか、保険料はどこまでなら負担できるのかをじっくり検討することが大切です。
安易に手続きを進めるのではなく、ご契約の保険会社の担当者から十分な説明を受け、疑問点を解消し、ご自身の状況に合った賢い選択をしていただくことを願っております。必要であれば、複数の保険会社や独立系のファイナンシャルプランナーなどに相談してみることも良いでしょう。