老後の介護費用に備える ~公的介護保険と民間の介護保険の賢い使い方~
老後の生活において、多くの方が不安に感じることの一つに「介護」があります。もし介護が必要になった場合、どのくらいの費用がかかるのか、どうやって備えれば良いのか、といった疑問をお持ちの方もいらっしゃるでしょう。
介護に備えるための公的な制度として「公的介護保険」がありますが、この制度だけで全ての費用やサービスを賄えるとは限りません。そこで今回は、公的介護保険の仕組みと、それを補う役割を持つ民間の介護保険について、それぞれの特徴と、賢く組み合わせて備える方法をご紹介します。
公的介護保険とはどのような制度か
公的介護保険は、介護が必要になった方を社会全体で支えるための国の制度です。40歳以上の方が加入者となり、保険料を納めることで、介護が必要と認定された場合にサービスを利用できます。
- 利用できる人: 原則として65歳以上の方で、市区町村から「要支援」または「要介護」の認定を受けた方がサービスを利用できます。40歳から64歳までの方でも、特定の病気が原因で介護が必要になった場合には利用が可能です。
- 受けられるサービス: 自宅で受けられる訪問介護や通所介護(デイサービス)、短期入所(ショートステイ)のほか、介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)などへの入所といったサービスがあります。利用できるサービスの種類や量は、要介護度によって決まります。
- 自己負担: 原則として、かかった費用の1割が自己負担となります。ただし、所得に応じて2割または3割となる場合があります。また、1ヶ月の自己負担額には上限(高額介護サービス費)が設けられており、上限を超えた分は払い戻されます。
公的介護保険は、介護の負担を軽減するための重要な制度ですが、利用できるサービスには上限があり、施設の費用なども全てを賄えるわけではありません。例えば、施設に入所する場合の食費や居住費、日常生活費などは原則として自己負担となります。
民間の介護保険の役割
公的介護保険だけでは不足する可能性のある費用や、利用したいサービスを補うために検討されるのが、民間の介護保険です。民間の介護保険は、保険会社が提供する商品であり、公的介護保険とは別に給付金を受け取ることができます。
民間の介護保険の主な目的は、公的介護保険の対象とならない費用(食費、居住費など)や、公的サービスの上限を超えて利用したいサービスにかかる費用、あるいは家族が介護する場合の費用などを準備することにあります。
- 給付の仕組み: 商品によって異なりますが、一般的には保険会社が定める特定の状態(例えば、公的介護保険の要介護2以上に認定された場合など)になったときに、一時金や年金形式で給付金が支払われます。
- 商品の種類: 終身タイプや一定期間のみ保障するタイプ、貯蓄機能を併せ持つタイプなど、さまざまな商品があります。
- 検討するメリット: 公的介護保険の自己負担分や対象外の費用を補えるため、介護にかかる経済的な不安を軽減できます。また、公的サービス以外の選択肢を検討しやすくなる場合もあります。
ただし、民間の介護保険に加入するには、保険料の支払いが必要です。また、健康状態によっては加入が難しかったり、保険料が高くなったりする場合もあります。保障内容や給付条件は商品によって大きく異なるため、内容をよく確認することが大切です。
公的・民間介護保険をどう組み合わせるか
老後の介護に賢く備えるためには、公的介護保険の仕組みを理解した上で、ご自身の経済状況や家族構成、どのような介護を望むかなどを考慮し、民間の介護保険でどれだけ補うか検討することが重要です。
- 公的介護保険でできること・できないことを把握する: まずは、ご自身が公的介護保険でどのようなサービスをどの程度利用できるのか、自己負担はどのくらいになるのかを知ることから始めましょう。市区町村の窓口や地域包括支援センターで相談できます。
- 必要な介護費用を想定する: 将来どのような介護が必要になるかは分かりませんが、統計データなどを参考に、自宅介護の場合や施設入所の場合で、公的介護保険で賄えない費用がどのくらいかかるか、おおよその目安を立ててみましょう。
- 自己資金や他の備えを確認する: 貯蓄や年金、他の保険(例えば、終身保険の一部を解約して介護費用に充てるなど)で、想定される介護費用をどの程度賄えるかを確認します。
- 民間の介護保険で補う部分を検討する: 公的介護保険と自己資金で不足する可能性のある部分を、民間の介護保険で準備することを検討します。必要な保障額は、想定される不足額によって変わります。
民間の介護保険を検討する際は、給付の条件(どのような状態で給付されるか)や給付金の金額、保険料などを複数の商品を比較することが望ましいです。また、一度加入すると長く付き合うことになるため、無理のない保険料で、ご自身のニーズに合った保障内容の商品を選ぶことが大切です。
まとめ
老後の介護への備えは、公的な制度である公的介護保険が基本となります。その上で、公的介護保険だけでは不安な部分を、民間の介護保険で補うという考え方が一般的です。
ご自身の現在の健康状態や経済状況、将来のライフプランなどを踏まえ、公的介護保険と民間の介護保険をどのように活用するかを検討することが、賢く介護に備えるための第一歩と言えるでしょう。
保険選びは、ご自身の状況に合わせて慎重に行う必要があります。この記事が、老後の介護費用について考えるきっかけとなり、備えを進めるための一助となれば幸いです。