老後の保険金・給付金を受け取る際の知っておきたい手続きと注意点
老後の生活で保険金や給付金を受け取る可能性
定年退職を迎え、老後の生活に入ると、加入している生命保険や医療保険などから、保険金や給付金を受け取る機会が出てくることがあります。
例えば、
- 病気やケガで入院・手術をした場合
- 介護が必要な状態になった場合
- 加入している貯蓄型保険が満期を迎えた場合
- 万が一の場合の死亡保険金(ご自身の名義の契約で、受取人がご家族などになっている場合)
- 生存給付金など、一定期間ごとに支払われるお金がある場合
こうしたお金は、老後の生活を支える上で大切な資金となる可能性があります。しかし、「どうやって受け取るの?」「何か手続きが必要なの?」「税金はかかるの?」といった疑問や不安を感じる方もいらっしゃるかもしれません。
この記事では、老後、保険金や給付金を受け取る際に知っておきたい基本的な手続きの流れと、いくつか注意しておきたい点について、分かりやすくご説明します。
保険金・給付金を受け取るまでの基本的な流れ
保険金や給付金は、何もせずに自動的に支払われるわけではありません。原則として、ご自身やご家族など、保険金を受け取る権利がある方が、保険会社に請求の手続きを行う必要があります。
一般的な手続きの流れは、以下のようになります。
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保険金・給付金の支払事由が発生する
- 入院や手術をする
- 介護が必要と認定される
- 加入している保険が満期を迎える
- ご家族などが亡くなる(死亡保険金の支払事由)
- 特約に定められた特定の状態になる(例:高度障害状態、特定疾病の診断など)
- 生存給付金の支払時期になる
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保険会社に連絡する
- 保険証券などに記載されている保険会社の連絡先(電話番号やウェブサイトなど)に連絡し、保険金・給付金の請求をしたい旨を伝えます。
- この際、保険証券の番号や契約者の氏名などを聞かれることがありますので、手元に準備しておくとスムーズです。
- 保険会社から、今後の手続きについて案内があります。
-
必要書類を受け取り、記入・準備する
- 保険会社から、保険金・給付金の種類に応じた請求書や、必要となる書類の案内が郵送などで送られてきます。
- 請求書に必要事項を記入します。
- 請求事由を証明するための書類を準備します。例えば、
- 医療保険の入院・手術給付金なら、医師の診断書や領収書
- 介護保険の給付金なら、公的な介護認定の書類
- 死亡保険金なら、死亡診断書や戸籍謄本など
- これらの書類は、保険会社所定の用紙がある場合や、コピーで良い場合など、保険金の種類や保険会社によって異なりますので、案内に従って準備してください。
-
保険会社に必要書類を提出する
- 記入済みの請求書と、準備した必要書類を保険会社に郵送などで提出します。
-
保険会社の審査
- 提出された書類に基づき、保険会社が保険金・給付金の支払条件を満たしているかなどを確認します。
- 必要に応じて、保険会社から確認の連絡が入ったり、追加の書類提出を求められたりすることもあります。
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保険金・給付金の支払い
- 審査が完了し、支払いが決定すると、指定した銀行口座などに保険金・給付金が振り込まれます。
- 支払い完了の通知(支払明細書など)が送られてきます。
この流れは一般的なものであり、保険の種類や保険会社によっては細部が異なる場合があります。ご自身の保険証券や保険会社からの案内をよくご確認ください。
保険金・給付金を受け取る際の注意点
保険金や給付金を受け取る際には、いくつか注意しておきたい点があります。
1. 請求漏れがないか確認しましょう
複数の保険に加入している場合、どの保険からどのような保険金や給付金が受け取れるのか、全て把握しておくことが大切です。例えば、病気で入院した場合、医療保険だけでなく、生命保険に医療特約をつけていたり、別の傷害保険に入っていたりすると、それぞれから給付金を受け取れる可能性があります。
ご自身の加入している保険契約の内容を一覧にして整理しておくと、いざという時に請求漏れを防ぐのに役立ちます。
2. 請求には期限(時効)があります
保険金や給付金を請求する権利には、時効が定められているのが一般的です。多くの場合、保険金などの支払事由が発生した日から3年と定められています(保険法による)。この期間を過ぎると、原則として請求できなくなる可能性があります。
支払事由が発生した際は、なるべく早く保険会社に連絡し、手続きを進めるようにしましょう。
3. 受け取り方法を選べる場合があります
死亡保険金や満期保険金など、まとまった金額を受け取る場合、「一時金」として一度に受け取るか、「年金形式」として分割して受け取るかを選べる場合があります。
一時金で受け取ればすぐにまとまった資金として使えますが、年金形式にすれば定期的な収入として老後の生活設計に組み込めます。ご自身のライフプランや資金計画に合わせて、どちらが良いか検討すると良いでしょう。ただし、すべての保険で選択肢があるわけではありませんので、契約内容をご確認ください。
4. 税金がかかることがあります
受け取った保険金や給付金には、税金がかかる場合があります。税金の種類は、保険の種類や、保険料を誰が払い、誰が保険金を受け取るか(契約者、被保険者、受取人の関係)によって異なります。
- 所得税・住民税: 満期保険金や生存給付金を一時金で受け取った場合(一時所得)、年金形式で受け取った場合(雑所得)などにかかることがあります。
- 相続税: 被保険者が亡くなったことにより、死亡保険金を受け取った場合にかかることがあります。ただし、死亡保険金には一定の非課税枠があります(法定相続人×500万円)。
- 贈与税: 契約者、被保険者、受取人がそれぞれ異なる場合に、贈与とみなされてかかることがあります。
税金の計算方法は複雑であり、個々の状況によって異なります。詳しい内容については、税務署や税理士などの専門家にご相談されることをお勧めします。
5. 受取人の指定は重要です
特に死亡保険金の場合、誰を保険金受取人に指定しているかが非常に重要です。指定された受取人だけが保険金を請求する権利を持ちます。もし受取人がすでに亡くなっている場合などは、保険会社の規定に従って次の順位の受取人などが指定されることになりますが、手続きが煩雑になることがあります。
また、内縁の妻や事実婚のパートナーなど、法律上の配偶者や親族以外を受取人に指定したい場合は、特別な手続きや条件が必要な場合があります。ご自身の保険契約の受取人が誰になっているか、改めて確認しておくと良いでしょう。
まとめ:老後の安心のために、ご自身の保険を確認しましょう
老後の生活で保険金や給付金を受け取る可能性は十分にあります。いざという時に慌てず、必要な資金をスムーズに受け取るためには、日頃からご自身の保険契約の内容を把握しておくことが大切です。
- どんな保険に加入しているか
- どんな場合に保険金や給付金が受け取れるのか
- 保険金受取人は誰になっているか
- 保険会社への連絡先
これらの情報を整理し、もし保険証券が見当たらない場合は保険会社に再発行を依頼するなど、いつでも確認できる状態にしておきましょう。
手続きの方法や必要書類について不安がある場合は、遠慮なく保険会社に問い合わせてみてください。保険の専門家は、契約者の方々が保険を有効に活用できるようサポートしてくれます。
ご自身の保険について正しく理解し、適切に手続きを行うことが、老後の安心につながります。