保険金が受け取れない? 定年世代が理解しておきたい理由と注意点
老後の生活を安心して過ごすために、医療や介護、万が一の事態に備えて保険に加入している、あるいは加入を検討されている方もいらっしゃると思います。保険は、もしもの時に経済的な支えとなる心強い存在ですが、契約内容によっては「保険金が受け取れない」というケースも起こり得ます。
いざという時に困らないためにも、保険金が支払われないのはどのような時なのか、その主な理由と注意点について、分かりやすくご説明いたします。ご自身の保険契約を確認する際の参考にしていただければ幸いです。
なぜ保険金が受け取れないケースがあるのでしょうか
保険は、契約時に交わす「約款(やっかん)」という約束事に基づいて成り立っています。保険会社は、約款に定められた条件(支払事由)を満たした場合に保険金を支払いますが、反対に、約款に定められた特定の条件下では保険金を支払わないことになっています。
これは、保険制度全体の公平性を保つために必要なルールです。特定の状況下では保険金が支払われないことをあらかじめ理解しておくことが、保険を賢く活用する上でとても大切です。
保険金が支払われない主なケース
保険金が支払われないケースはいくつか考えられますが、定年世代の方が特に知っておきたい主な理由をいくつかご紹介します。
1. 告知義務違反があった場合
保険に加入する際、過去の病歴や現在の健康状態、職業などについて、保険会社に正しく報告する義務があります。これを「告知義務」といいます。
もし、告知すべき重要な事実を伝えなかったり、事実と異なる告知をしたりした場合(告知義務違反)、保険会社は契約を解除したり、たとえ保険金や給付金の請求事由が発生しても、それらを支払わないことがあります。
「昔の病気だから大丈夫だろう」「軽い症状だから言う必要はないだろう」と思ってしまうことがあるかもしれませんが、医師の診察や治療を受けたことがある場合は、正確に告知することが重要です。告知について不安な点があれば、必ず保険会社の担当者や保険相談窓口に確認するようにしましょう。
2. 支払事由に該当しない場合
保険契約ごとに、保険金や給付金が支払われる「支払事由」が具体的に定められています。例えば、医療保険であれば「病気やケガによる入院・手術」などが支払事由となります。
請求した内容が、契約している保険の支払事由に該当しない場合は、保険金や給付金は支払われません。例えば、美容整形のための入院や、健康診断のための入院などは、原則として医療保険の支払事由には含まれません。
ご自身の加入している保険が、どのような場合に保険金や給付金が支払われるのか、契約時に受け取る「保険証券」や「約款」で確認しておくことが大切です。
3. 免責事由に該当する場合
約款には、保険会社が保険金や給付金を支払わない特定の原因や状況が定められています。これを「免責事由」といいます。
一般的な生命保険や医療保険における主な免責事由には、以下のようなものがあります。
- 契約者や被保険者、保険金受取人の故意による場合:自らの命を絶つ(自殺、ただし契約から一定期間経過後は支払われる場合もあります)、保険金目的で被保険者を死亡させるなど。
- 戦争やその他の変乱による場合:戦争や内乱、暴動などによって生じた損害。
- 泥酔運転や無免許運転など、法令に違反する行為によって発生した事故。
- 特定の危険な運動:プロの登山(ピッケルやザイル等を使用するもの)、ボブスレー、スカイダイビングなど、特に危険度の高い運動を行っている間の事故(約款で定められています)。
これらの免責事由に該当する原因で生じた損害に対しては、原則として保険金や給付金は支払われません。
4. 保険料の払込みが滞っている場合
保険契約は、毎月あるいは毎年、保険料を払い続けることで有効に継続されます。もし保険料の払込みが一定期間滞ると、契約は「失効」してしまうことがあります。契約が失効している間に発生した病気やケガ、死亡などに対しては、保険金や給付金は支払われません。
保険料の支払いが遅れそうな場合は、早めに保険会社に相談することが重要です。一定期間内であれば、「復活」という手続きで契約を元に戻せる場合もありますが、健康状態の告知が必要となるなど条件があります。
5. 請求期間が過ぎてしまった場合
保険金や給付金の請求には期限が設けられています。通常は保険金等の支払事由が発生した日から3年以内などと定められていることが多いですが、具体的な期間は保険会社や契約内容によって異なります。請求期間を過ぎてしまうと、原則として保険金や給付金を受け取る権利が失われてしまいます。
もしものことがあった際には、請求手続きを忘れないように、できるだけ早く保険会社に連絡することが大切です。
まとめ:安心のために契約内容を確認しましょう
保険は、いざという時の大きな助けとなりますが、「保険金が受け取れない」という事態は避けたいものです。そのためには、以下の点を理解しておくことが重要です。
- 告知義務を正しく果たす:加入時の健康状態などの告知は正確に行いましょう。
- 契約内容を理解する:ご自身の保険が「どのような場合に」「どのくらいの金額が」支払われるのか、支払事由と免責事由をしっかり確認しましょう。
- 保険料の払込みを続ける:保険契約を有効に保つため、保険料は期日までに払い込みましょう。
- 早めに保険会社に連絡する:保険金や給付金の請求事由が発生したら、速やかに保険会社に連絡し、手続きを進めましょう。
ご自身の保険証券や約款を確認し、もし分からないことがあれば、保険会社のお客様相談窓口や、信頼できる保険の専門家に相談してみることをお勧めいたします。ご自身の契約内容をしっかり把握することが、老後の安心につながります。