保険の「保障」とは一体何? 定年世代が知っておきたい基本のキホン
保険について考え始めたとき、「保障」という言葉をよく耳にされるかと思います。しかし、「保障」とは具体的に何を指すのか、漠然としている方もいらっしゃるかもしれません。特に、老後の生活資金や医療費、介護費用などに備えたいと考える定年世代の方にとって、「保障」の内容を正しく理解することは、ご自身に本当に必要な保険を選ぶための大切な第一歩となります。
この記事では、保険の「保障」とは何か、そして定年世代の方々が知っておきたい基本的な「保障」の種類について、分かりやすくご説明いたします。
保険における「保障」とは?
保険における「保障」とは、簡単に言えば「保険会社が約束する、お金が支払われる条件とその金額」のことです。
私たちは、予測できない将来の出来事(病気やケガ、介護が必要になること、万が一のことなど)によって、経済的に困ってしまうリスクに備えるために保険に加入します。保険契約を結ぶ際に、どのような出来事(原因)が起きたときに、どれくらいの金額を保険会社が支払ってくれるか、という約束事が定められています。この約束事こそが「保障」なのです。
たとえば、医療保険であれば「病気やケガで入院したとき」や「手術を受けたとき」に、あらかじめ決められた金額が支払われる、これが医療保険の「保障」です。介護保険であれば「公的な要介護認定を受けたとき」に、一時金や年金形式でお金が支払われる、これが介護保険の「保障」となります。
このように、「保障」は、私たちがもしもの事態に直面した際に、経済的な支えとなる大切な仕組みです。
なぜ定年世代にとって「保障」の理解が重要なのでしょうか
定年退職後のセカンドライフは、多くの方にとって「人生の集大成」とも言える大切な時期です。しかし同時に、以下のような様々なリスクが現実味を帯びてくる時期でもあります。
- 医療費の増加: 年齢を重ねると、病気やケガのリスクが高まり、医療機関にかかる機会が増える傾向があります。公的医療保険がありますが、差額ベッド代や先進医療など、自己負担となる費用もあります。
- 介護費用の発生: 自分自身や配偶者が介護を必要とする状態になる可能性も考えられます。公的介護保険だけでは賄えない費用も発生し得ます。
- 死亡時の整理資金: 万が一のことがあった場合、お葬式費用や身辺整理のための費用が必要になります。
これらのリスクに備えるために、保険は非常に有効な手段の一つです。そして、それぞれの保険が「どのようなリスクに対して」「どのような条件で」「いくら」お金を支払ってくれるのか、つまり「保障」の内容を正確に理解していなければ、本当に必要な備えができているのか判断することができません。
漠然と「不安だから保険に入っておこう」と考えるのではなく、ご自身の今の状況や将来への不安を具体的に整理し、その不安を解消するために「どのような保障が必要か」を考えることが、賢い保険選びには不可欠なのです。
定年世代が知っておきたい主な「保障」の種類
定年世代の方々が特に関心を持つことが多い、代表的な保険の「保障」をいくつかご紹介します。
1. 医療保障
病気やケガによる入院や手術などに備える保障です。
- 入院給付金: 入院1日あたり、決められた金額が支払われます。(例: 入院日額5,000円、1万円など)
- 手術給付金: 手術の種類に応じて、決められた金額が支払われます。
- 先進医療給付金: 厚生労働大臣が定める先進医療を受けた際に、技術料と同額程度が支払われます。(公的医療保険の対象外となる先進医療の技術料は高額になる場合があります)
公的な健康保険で医療費の自己負担は軽減されますが、入院中の食費や差額ベッド代、先進医療費などは自己負担となります。医療保障は、これらの自己負担額や、入院・療養期間中の収入減などを補う役割を果たします。
2. 介護保障
公的な介護保険制度でカバーしきれない、介護にかかる経済的負担に備える保障です。
- 一時金: 要介護状態と認定された際に、まとまった金額が一度に支払われます。
- 年金形式: 要介護状態が続いている間、毎年または毎月、決められた金額が支払われます。
公的介護保険のサービスを利用しても、自己負担割合や、自宅のバリアフリー改修費用、介護用品の購入費用などが発生します。介護保障は、これらの費用負担を軽減し、安心して介護サービスを利用したり、必要な環境を整えたりするための資金となります。
3. 死亡保障
被保険者(保険の対象となっている方)が亡くなられた場合に、保険金受取人(ご遺族など)に保険金が支払われる保障です。
- 葬儀費用や身辺整理費用: 亡くなられた後の整理にかかる費用に備えます。
- ご遺族の生活費: 残された配偶者などの生活を支えるための資金となります。(ただし、定年世代の場合は、お子様が独立しているなど、現役世代ほど大きな生活保障が必要ないケースもあります)
- 相続関連費用: 相続税の納税資金や、遺産分割を円滑に進めるための資金として活用できる場合があります。
終身保険の場合、死亡保障は一生涯続きます。掛け捨て型の定期保険に比べて保険料は高めですが、貯蓄性があるため、将来的に解約返戻金を老後資金に充てたり、保障を活かして相続対策に利用したりすることも可能です。
4. リビングニーズ特約
これは、死亡保障の一部を前倒しで受け取ることができる特約(追加できる保障)です。
- 対象: 余命6ヶ月以内と判断された場合などに利用できます。(保険会社によって条件は異なります)
- 活用: 生存中に保険金を受け取ることで、治療費や介護費用、残された時間を有効に使うための資金などに充てることができます。
本来は死亡後に支払われる保険金を、ご自身の意思で生きている間に活用できるため、もしもの時の選択肢を広げる保障と言えます。
自分に必要な「保障」を考えるポイント
ご自身に必要な「保障」を考える際には、以下の点を整理してみましょう。
- 今の状況: ご自身の健康状態、貯蓄額、収入(年金など)、家族構成(配偶者の有無、独立したお子様の状況など)を確認します。
- 将来への不安: どのようなリスク(医療、介護、相続など)に対して、特に不安を感じているのかを明確にします。
- 公的な制度: 健康保険、介護保険、公的年金(遺族年金含む)など、公的な制度でどこまでカバーできるのかを知っておきます。
- 不足する部分: 公的な制度や現在の貯蓄などでカバーしきれない、不安な部分を民間の保険でどのように補うかを検討します。
例えば、「病気やケガで入院したときに、貯蓄を取り崩したくない」ということであれば医療保障を、「将来、配偶者に介護が必要になった時に備えたい」ということであれば介護保障を検討するといったように、具体的な不安と必要な保障を結びつけて考えていきます。
まとめ
保険の「保障」とは、もしもの事態が起きた際に、経済的な困窮を防ぐための保険会社の約束事です。定年世代の方々にとっては、医療費や介護費用、死亡時の整理資金など、老後に特に起こりやすいリスクに備える上で、「保障」の内容を理解することが非常に重要になります。
ご自身の現状や将来への不安をよく整理し、どのような「保障」が必要なのかを考えることが、賢い保険選びの第一歩となります。様々な保険の保障内容を比較検討する際には、今回ご説明した基本的な保障の種類を参考にしていただければ幸いです。ご自身だけでの判断が難しい場合は、保険の専門家などに相談してみることも良い方法と言えるでしょう。