健康に不安がある方のための保険選びの基礎知識
健康に不安がある場合の保険選びについて
一般的に、保険は加入を希望する方の健康状態に基づいて引受の判断が行われます。これは、健康状態によって将来の保険金や給付金の支払いリスクが異なるためです。そのため、持病や既往症(過去にかかった病気やけが)がある場合、通常の保険への加入が難しいケースがあります。
しかし、健康に不安がある方でも加入を検討できる保険はいくつか存在します。どのような選択肢があるのか、そしてそれぞれの保険の特徴や注意点について、分かりやすくご説明します。
なぜ持病があると保険加入が難しくなる場合があるのか
保険は、多くの人が保険料を出し合い、もしものことがあった方に保険金や給付金を支払う「相互扶助」の仕組みで成り立っています。保険会社は、加入者全体の公平性を保つため、病気にかかるリスクが高い方には、通常の条件では加入を制限したり、保険料を調整したりすることがあります。
持病がある場合、将来的にその病気や関連する病気で医療を受ける可能性や、残念ながら亡くなる可能性が、健康な方に比べて統計的に高くなることがあります。このリスクの高さが、保険会社による加入審査に影響を与える理由です。
健康に不安がある方のための保険の種類
健康に不安がある方でも加入を検討できる保険には、主に以下の種類があります。
1. 通常の保険に特別な条件付きで加入できるケース
病気の種類や状態によっては、持病があっても通常の医療保険や死亡保険に加入できる場合があります。ただし、その病気に関連する保障が一定期間削減されたり、保険料が割り増しされたり、特定の病気を保障の対象外(特定部位不担保)としたりするなど、特別な条件が付くことがあります。
加入時には、過去の病歴や現在の健康状態について、保険会社からの質問に正確に答える「告知義務」があります。告知した内容に基づいて保険会社が審査を行い、加入の可否や条件が提示されます。告知は、保険契約を結ぶ上で非常に重要です。意図的に事実と異なる告知をしたり、告知すべき事実を告知しなかったりすると、「告知義務違反」となり、保険金・給付金が支払われなかったり、契約が解除されたりする可能性があります。事実を正確に伝えることが大切です。
2. 引受基準緩和型保険(限定告知型保険)
このタイプの保険は、通常の保険よりも保険会社の引受基準(加入できる条件)が緩和されています。告知する項目が3〜5個程度に限定されているのが特徴です。例えば、「最近3ヶ月以内に医師から入院・手術・検査をすすめられたか」「過去〇年以内に特定の病気で入院・手術をしたか」といった簡単な質問に「いいえ」と答えられれば加入できる場合があります。
- メリット: 通常の保険より加入しやすい。健康状態に自信がない方でも検討しやすい選択肢です。
- デメリット: 通常の保険に比べて保険料が割増しされています。また、契約から一定期間(例えば1年や2年)は、支払われる保険金や給付金が50%などに削減される期間(削減支払い期間)が設けられていることが多いです。さらに、保障内容や特約の種類が通常の保険より限られる場合があります。
告知項目は保険会社や商品によって異なりますので、内容をよく確認することが重要です。
3. 無選択型保険
このタイプの保険は、健康状態に関する告知が一切不要、または非常に簡単な質問のみで加入できる保険です。文字通り、健康状態に関わらず「無選択」で加入できます。
- メリット: 健康状態に全く自信がない方でも加入できます。
- デメリット: 引受基準緩和型保険よりもさらに保険料が割増しされています。保障内容が死亡保障のみに限定される場合が多く、医療保障や介護保障が付かないこともあります。また、契約からの一定期間は、病気による死亡の場合には保険金が支払われないなど、より厳しい条件が付いていることがあります。
無選択型保険は、他の保険への加入が難しい場合の最終的な選択肢として検討されることが多いです。保険料がかなり高くなる点や保障内容が限定される点を十分に理解しておく必要があります。
保険選びのポイント
健康に不安がある方が保険を選ぶ際には、以下の点を意識すると良いでしょう。
- ご自身の健康状態を正確に把握する: 加入を検討する前に、現在の病気の状態、治療歴、服薬状況などを整理しましょう。これが保険選びの第一歩となります。
- 複数の選択肢を比較検討する: 通常の保険、引受基準緩和型保険、無選択型保険など、様々な種類の保険があります。ご自身の健康状態や希望する保障内容、支払える保険料などを考慮して、どのタイプの保険が合っているか検討しましょう。
- 保障内容と保険料のバランスを見る: 引受基準が緩和された保険ほど、一般的に保険料は高くなります。必要な保障は何か、そしてその保険料を無理なく払い続けられるか、バランスを考えて判断することが重要です。特定の病気だけを保障する保険など、限定的な保障の保険で十分な場合もあります。
- 告知事項をよく確認し、正確に告知する: 特に引受基準緩和型保険では、告知項目に正確に回答することが必須です。不明な点は、保険会社や保険の専門家に確認しましょう。
- 公的な医療・介護制度も理解しておく: 日本の公的な医療保険制度や介護保険制度は非常に充実しています。高額療養費制度のように、医療費の自己負担額に上限を設ける制度もあります。これらの公的制度でどこまでカバーできるかを知ることで、民間の保険で準備すべき範囲が見えてきます。
- 専門家や相談窓口を利用する: 保険の種類や仕組みは複雑に感じられるかもしれません。保険会社の相談窓口や、特定の保険会社に偏らない立場でアドバイスをしてくれる専門家(ファイナンシャルプランナーなど)に相談することも有効な方法です。ご自身の状況を伝えて、どのような選択肢があるのか、それぞれのメリット・デメリットは何かを丁寧に説明してもらいましょう。
まとめ
持病があるからといって、必ずしも保険に加入できないわけではありません。通常の保険に条件付きで加入できる可能性や、引受基準緩和型保険、無選択型保険といった選択肢があります。
保険選びで大切なのは、ご自身の健康状態と向き合い、どのようなリスクに備えたいのかを明確にすることです。その上で、様々な保険の情報を集め、保障内容、保険料、加入条件などを比較検討することが、ご自身に合った保険を見つけるための第一歩となります。分からないことはそのままにせず、専門家などの助けを借りながら、納得のいく保険選びを進めてください。